健康診断の結果に「貧血」と書かれていると、すぐ受診した方がよいのか、何科に相談すればよいのか迷う方も少なくありません。一度の結果だけで原因が決まるわけではありませんが、数値の程度や症状によっては追加の確認が必要になることがあります。
まずは、結果表のどの項目がどのくらい外れているかを見ていきます。あわせて、動悸や息切れ、月経量、便の色、過去の健診結果なども確認すると、次に相談する先を考えやすくなります。
健診で貧血を指摘されたときに見るポイント、相談先の考え方、受診時に持っていくものをまとめました。不安を大きくしすぎず、結果表をもとに次の対応を考えていきましょう。
- 結果表の数値と症状の有無を整理
- 「要再検査」「要精密検査」は結果表に沿って相談
- 迷う場合は内科で結果表を見せて相談
健康診断で貧血と言われた原因と受診目安

健康診断で血色素量などに異常があった場合は、まず結果表の基準範囲と判定区分を見ます。前回の結果があれば、今回だけの変化なのか、以前から続いているのかも確認しやすくなります。
数値の判定基準
貧血を見るときは、ヘモグロビン(Hb)などの項目が手がかりになります。基準範囲は検査機関、性別、年齢などで変わるため、結果表に書かれた基準値と判定区分を見比べます。
貧血は、健診で見つかることがある所見です。原因は一つとは限らないため、症状、月経量、便の色、これまでの病気、過去の検査結果も一緒に見ます。「要再検査」「要精密検査」などの指示があるときは、結果表を持って医療機関で相談すると、追加検査が必要かどうかを整理しやすくなります。
【用語解説】ヘモグロビン(血色素量)とは、赤血球に含まれるタンパク質の一種で、全身の組織に酸素を運ぶ重要な役割を担っています。
ヘモグロビンの役割
ヘモグロビンは、肺で取り込んだ酸素を全身へ運ぶ働きをしています。この値が低いと、体のすみずみまで酸素が届きにくくなり、疲れやすさや息切れにつながることがあります。
たとえば、階段で息が上がりやすい、仕事中に集中しにくい、以前より疲れやすいといった変化が出ることもあります。「血が薄いだけ」と考えず、結果表の数値と体調をあわせて見ていきます。
自覚症状の有無
健診で異常を指摘されても、はっきりした症状がない方は少なくありません。ゆっくり変化した場合は、体がその状態に慣れてしまい、自分では気づきにくいことがあります。
ただ、症状がない場合でも、健診の判定区分や所見欄の指示は確認しておきましょう。数値が正常範囲内でも、貯蔵鉄(フェリチン)が低い「潜在性鉄欠乏(隠れ貧血)」が見つかることがあります。
症状がない場合でも、結果表に再検査や精密検査の指示があるときは、内容を確認して相談先を考えます。
貧血が続くと、体は酸素不足を補うために心臓に負担がかかることがあります。健診で指摘がある場合は、結果表を持って医療機関で相談し、追加検査が必要かどうかを確認しましょう。
貧血の背景にある主な原因
貧血の背景は人によって違います。食事の影響だけでなく、月経、出血、慢性的な病気などが関係することもあるため、健診結果と症状に合わせて確認するポイントを見ていきます。
鉄分の不足
よく見られる原因の一つが、鉄分の不足です。食事の偏り、過度なダイエット、成長期、妊娠・授乳期などでは、体が必要とする鉄の量に摂取量が追いつかないことがあります。
貧血や鉄不足は、月経のある女性で見られることがあります。ただし、頻度や程度には個人差があります。自己判断でサプリだけに頼らず、結果表をもとに追加検査(フェリチンなど)が必要かどうか、医療機関で相談しましょう。
食事だけで補いにくい場合は、検査結果や体調を見ながら、医療機関で薬による補充を検討することがあります。
消化管の疾患
男性や閉経後の女性で貧血がある場合は、胃や大腸などから少量ずつ出血していないかを確認することがあります。腹痛などの症状が目立たないまま、便の色の変化や便潜血検査をきっかけに見つかることもあります。
便潜血検査が陰性でも、貧血の程度や経過によっては追加の検査を考えることがあります。便が黒っぽい、急に値が下がったなどの変化がある場合は、結果表を持って消化器内科を含む医療機関で相談しましょう。
婦人科系の疾患
月経のある方では、月経量が多いことが貧血に関係する場合があります。子宮筋腫や子宮内膜症などが背景にあることもあり、自分では「いつもの量」と思っていても、実際には出血量が多いことがあります。
夜用のナプキンが短時間で必要になる、血の塊が混じるなど月経量が多いサインがある場合は、婦人科で相談すると状況を整理しやすくなります。貧血の治療とあわせて、月経量が増える背景を確認することが、同じ所見を繰り返す場合の参考になります。
慢性的な病気
腎臓の働きが低下している場合、赤血球を作る仕組みに影響し、貧血につながることがあります。健診で腎機能の項目も指摘されているときは、血液検査の値だけでなく、腎臓との関係も含めて確認します。
そのほか、慢性的な炎症を伴う病気やホルモンに関わる病気が影響することもあります。ほかの健診項目にも異常がある場合は、貧血だけを切り離さず、全身の状態として見ていくことが大切です。
単なる鉄不足と決めつけず、健診結果の所見欄もあわせて見ておくとよいでしょう。必要な検査は数値や症状によって変わりますので、医療機関で相談すると整理しやすくなります。
受診を検討すべき具体的な症状
数値の異常に加えて、次のような変化がある場合は、医療機関で相談する目安になります。
息切れや動悸
階段を上ったときや少し急いで歩いたときに、以前より息が切れる、胸がドキドキするという変化はありませんか。ヘモグロビンが少ないと、体が酸素を届けようとして心拍が上がりやすくなることがあります。
「体力が落ちたのかな」と思っていても、血液の状態が関係していることがあります。息苦しさが続く、回数が増えているという場合は、健診結果とあわせて相談してみましょう。
強い疲労感
眠っているのに体が重い、朝からだるさが抜けないといった症状が出ることもあります。酸素を運ぶ力が落ちると、体を動かすためのエネルギーを作りにくくなるためです。
集中しにくい、気分が落ち込みやすいと感じる方もいます。もちろん原因は貧血だけではありませんが、健診で指摘がある場合は血液検査の値と体調を照らし合わせて考えます。
立ちくらみやめまい
急に立ち上がったとき、目の前が暗くなるような立ちくらみや、ふわふわとしためまいが出ることがあります。ただし、立ちくらみは自律神経の乱れや血圧の変動によるものも多いため、血液検査の結果もあわせて見ていきます。
頻繁にめまいが起きる、または意識が遠のくような感覚がある場合は、健診結果とあわせて医療機関で相談してください。転倒しやすい場面がある方は、症状が出る状況(立ち上がったとき、入浴後など)もメモしておくと伝えやすくなります。
立ちくらみが何度も続く場合は、貧血以外の原因も含めて確認が必要になることがあります。転倒しないよう座って休み、健診結果と症状の頻度をメモして医療機関で相談してください。
数値から読み取れる貧血の状態
検査結果表には、貧血に関係する項目がいくつか並んでいます。まずは、どの項目が何を見ているのかを知っておくと、結果を読み取りやすくなります。
| 項目名 | 略称 | 確認のポイント | 意味すること |
|---|---|---|---|
| 血色素量 | Hb | 結果表の基準範囲と判定区分を確認 | 血液中の酸素運搬能力を見る指標。 |
| ヘマトクリット | Ht | 検査機関ごとの基準範囲を確認 | 血液全体に占める赤血球の容積の割合。 |
| 平均赤血球容積 | MCV | 他の項目とあわせて確認 | 赤血球一つの大きさを示す指標。 |
Hb(血色素量)
血色素量(ヘモグロビン)は、貧血を考えるときにまず確認される項目です。この数値が結果表の基準範囲を外れている場合は、判定区分や所見欄の指示もあわせて確認します。
値が大きく低い場合は、症状がなくても原因を調べる流れになることがあります。判定区分は健診機関によって異なるため、「要経過観察」「要精密検査」などの指示があるときは、結果表の案内に沿って相談先を考えます。
前回の健診結果があれば、今回の値と比べてどのように変化しているかも見ておきましょう。
Ht(ヘマトクリット)
ヘマトクリットは、血液の中に赤血球がどのくらい含まれているかを見る項目です。血液の濃さを知る手がかりの一つで、ヘモグロビンと一緒に見られることが多い項目です。
この値が低いときは、赤血球の数や大きさなどをあわせて見ます。水分の取り方や脱水の影響で変動することもあるため、ほかの項目と一緒に確認します。
MCV(平均赤血球容積)
MCVは、赤血球の平均的な大きさを示す項目です。低い場合と高い場合で考える原因が変わるため、貧血の背景を探る手がかりになります。
例えば、鉄欠乏性貧血では赤血球が小さくなるためMCVは低値を示します。一方で、ビタミンB12や葉酸が不足すると赤血球が大きくなり、MCVは高値を示すことが一般的です。
MCVを見ると、鉄不足を中心に考えるのか、ほかの原因も含めて見るのかを整理しやすくなります。
受診する診療科の選択基準
貧血を指摘されたとき、何科に相談すればよいか迷うことがあります。症状や健診結果の内容によって、相談先の考え方が変わります。
一般内科に相談
受診先に迷う場合や、健診結果全体を見てもらいたい場合は、一般内科で相談する方法があります。基本的な血液検査を行い、必要に応じて専門科へ紹介されることもあります。
かかりつけ医がある場合は、まずそこで健診結果を見せて相談するのも一つの方法です。過去の体調や検査結果を知っている医師であれば、前回との違いも含めて話しやすくなります。
まず相談する窓口として、地域の内科クリニックを選ぶ方もいます。
消化器内科を検討
男性や閉経後の女性、便の色が黒いなど気になる症状がある場合は、消化器内科で相談することがあります。胃や腸からの出血が関係していないかを確認するため、検査が検討されることもあります。
急に値が下がった、腹痛や体重減少がある、といった場合は早めに相談する目安になります。どの検査が必要かは、症状や検査結果を見ながら判断されます。
婦人科を検討
月経量が多い、月経痛が強い、出血期間が長いといった悩みがある場合は、婦人科で相談する方法があります。子宮筋腫や子宮内膜症などが関係していないかを確認することがあります。
鉄剤で値が改善しても、月経量が多い背景が残っていると、同じような所見を繰り返すことがあります。月経に心当たりがある場合は、内科だけでなく婦人科での相談も選択肢になります。
血液内科を受診
鉄不足以外の貧血が疑われる場合や、白血球・血小板にも異常がある場合は、血液内科で詳しく調べることがあります。血液内科は、血液の病気を専門に扱う診療科です。
鉄剤を使っても値が変わりにくい場合や、原因がはっきりしない状態が続く場合は、追加の血液検査などが検討されることがあります。大きな病院の血液内科を受診する際は、近くの医療機関から紹介される流れになることもあります。
受診時の準備と検査の流れ
受診時に伝える内容を事前にまとめておくと、診察がスムーズに進みます。持っていくものと、事前に見ておきたい点を確認しましょう。
健康診断の結果用紙を持参すると、医師が状況を把握しやすくなります。異常とされた数値だけでなく、他の項目や所見欄もまとめて見せると、次の対応が決まりやすくなります。
過去の結果があれば、数値の変化を時系列で見やすくなります。スマートフォンで写真を撮っておく方法もありますが、原本があると判定区分や所見欄を確認しやすくなります。
服用中の薬やサプリメントがある場合は、お薬手帳や製品名が分かるものを持参すると伝えやすくなります。薬やサプリメントの種類によっては、検査結果の見方に関係することがあります。
市販の鉄分サプリメントを使っている場合も、製品名や飲んでいる量を伝えてください。今の状態を把握するうえで参考になります。
医療機関では、再度の血液検査に加えて、フェリチンや網状赤血球などの項目を確認することがあります。鉄の不足の程度や、赤血球が作られている状態を見るためです。
原因がはっきりしない場合は、腹部エコー、内視鏡検査、婦人科の検査などを検討することがあります。どの検査を行うかは、数値、症状、年齢、月経の状況などをもとに決まります。
健康診断で貧血と言われたら|原因と受診目安に関するQ&A
まとめ:健康診断の結果を持って医療機関で相談しよう
- ヘモグロビン値は、結果表の基準範囲と判定区分をあわせて見る。
- 自覚症状が少なくても、鉄不足が隠れていることがある。
- 値が低い状態が続く場合は、体への負担も含めて確認する。
- 「要再検査」「要精密検査」の判定がある場合は、結果表に沿って相談する。
健康診断で貧血を指摘されたときは、結果通知書を手元に置き、判定区分や所見欄を見ながら次の対応を考えます。自覚症状が少ない場合でも、数値の程度や経過によっては追加の確認が必要になることがあります。
参考文献・出典
- 日本人間ドック・予防医療学会|判定区分表等に関するQ&A|2024年
- 国立がん研究センター がん情報サービス|がん検診について|2026年

