健康診断でeGFRが低いと言われたら、まずは腎機能の見方と再検査の必要性を正しく整理し、クレアチニンの数値に基づいた適切な対策を講じることが重要です。この数値は腎臓が老廃物を排出する能力を示す重要な指標であり、現状を正確に把握することが、将来の健康を守るための第一歩となります。
判定項目に「要再検査」や「経過観察」の文字があると、このまま病気が進行して透析になるのではないかと不安に感じる方も少なくありません。しかし、数値の低下には一時的な体調や筋肉量、内服薬の影響が関係している場合もあり、年齢や過去の推移を考慮した冷静な判断が求められます。
そこで本記事では、腎機能が変動する原因から食事・生活習慣の見直し方まで解説します。再検査の前に、結果表の判定区分・所見欄・過去の数値の推移を見直し、医療機関で伝える内容を整理できるようにします。
- eGFRが低めでも、まずは判定区分と所見欄、尿蛋白の有無を確認する
- 食事や生活習慣は、数値や体調に合わせて見直しポイントを決める
- 数値が続けて低い場合に備え、再検査で確認する項目と相談先を整理する
eGFRが低いと言われたら|健康診断の腎機能見方と再検査とクレアチニン
健康診断の結果で「eGFR(推算糸球体濾過量)」の数値が低いと指摘された場合、まずはその数値が何を意味するのかを正しく理解することが大切です。
eGFRの概要
eGFRとは、腎臓が1分間にどれだけの血液を濾過して老廃物を取り除けるかを示す指標です。
この数値は、血液検査で測定した血清クレアチニン値と、年齢、性別を数式に当てはめて算出されます。いわば「腎臓の偏差値」のようなもので、数値が低いほど腎臓の働きが低下していることを意味します。
一般的には、eGFRが60未満の状態が3か月以上続くと、慢性腎臓病(CKD)の疑いがあると判断されます。
【用語解説】eGFRとは、腎臓にある糸球体というフィルターが血液を綺麗にする能力を推測した値のことです。
クレアチニンの役割
クレアチニンは、筋肉を動かすエネルギーを使った際に出る老廃物の一種です。通常は腎臓で濾過されて尿として排出されますが、腎機能が低下すると血液中に溜まってしまいます。
つまり、血液中のクレアチニン濃度が高いほど、腎臓の濾過機能が落ちている可能性が高いと考えられます。ただし、この数値は筋肉量に影響されるため、筋肉質の人は高めに出やすく、高齢者や筋肉の少ない人は低めに出る傾向があります。
クレアチニン値はeGFRを算出する根拠となるため、結果表ではセットで見ておくと整理しやすいです。
CKDステージ分類
腎機能の状態は、eGFRの数値によってG1からG5までの5つのステージに分類されます。以下の表は、日本腎臓学会のガイドラインに基づいた一般的な分類表です。
| ステージ | eGFR値 | 腎機能の状態 |
|---|---|---|
| G1 | 90以上 | 正常または正常高値 |
| G2 | 60〜89 | 軽度低下 |
| G3a | 45〜59 | 軽度〜中等度低下 |
| G3b | 30〜44 | 中等度〜高度低下 |
| G4 | 15〜29 | 高度低下 |
| G5 | 15未満 | 末期腎不全 |
自身の数値がどの段階にあるかを確認し、生活習慣の見直しや相談先を考える材料にしてください。中等度以上の低下が続く場合は、結果表を持って医療機関で今後の確認項目を相談します。
加齢による影響
腎臓の機能は、たとえ病気がなくても加齢とともに自然と低下していく性質を持っています。
一般的に、40歳を過ぎるとeGFRは1年ごとに少しずつ減少していくと報告されています。そのため、高齢者の場合は数値が多少低くても、年齢相応の範囲内であれば過度に心配する必要がないケースもあります。
しかし、加齢による低下か病的な低下かを判断するには、過去の健診結果との比較が欠かせません。
尿蛋白の重要性

eGFRの数値と並んで、腎機能の評価で極めて重要なのが「尿蛋白」の有無です。
たとえeGFRが正常範囲内であっても、尿蛋白が陽性(1+以上)の場合は所見欄の内容も含めて確認が必要になります。結果表に「要再検査」「要精密検査」の指示があるときは、結果表を持って医療機関に相談し、再検査で何を確認するかを決めます。
尿蛋白とeGFRを組み合わせてリスクを判定することで、より正確な腎臓の状態が見えてきます。
eGFRやクレアチニンの数値が変動する原因
血液検査の結果は、検査当日の体調や前日の行動によって一時的に変動することがあります。ここでは、数値に影響を与える主な要因を確認していきましょう。
脱水の影響
脱水状態になると血液の濃度が高まり、一時的にクレアチニン値が上昇してeGFRが低く出ることがあります。
夏場の検査や、検査前の水分摂取を過度に控えた場合にこのような現象が起こりやすいでしょう。血液を濾過するための「水の勢い」が足りなくなるため、腎臓の能力が十分に発揮できない状態になります。
検査前には、医療機関の指示に従いつつ、適切な水分補給を心がけて受けることが正しい評価に繋がります。
筋肉量の差
クレアチニンは筋肉の代謝産物であるため、体格や筋肉量によって基準値が異なります。
日常的に激しいトレーニングを行っている人やボディービルダーの方は、腎臓に問題がなくてもクレアチニン値が高く出やすい傾向があります。逆に、筋肉が極端に少ない高齢の方などは、腎機能が悪化していても数値が正常に見えてしまう「隠れ腎機能低下」のリスクがあります。
筋肉量に左右されない指標も活用して判断することが、状況によっては役立ちます。気になる場合は、過去の推移や体格も含めて医療機関で伝えます。
激しい運動
検査の直前に激しい運動を行うと、筋肉からクレアチニンが過剰に放出されるため、数値が跳ね上がることがあります。
ジムでの筋力トレーニングや長距離のランニングなどは、検査の1〜2日前からは控えるのが賢明です。筋肉の炎症が起こると数値にノイズが入り、正確な腎機能の測定ができなくなってしまいます。
健康診断を受ける際は、検査の数日前から安静に過ごして臨むように注意しましょう。
市販の鎮痛剤
頭痛や生理痛、腰痛などで常用している市販の解熱鎮痛剤(NSAIDs)が、腎機能に影響を与える場合があります。
ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの成分は、腎臓の血流量に影響することがあります。短期間の使用であれば問題にならないこともありますが、長期間にわたって頻繁に服用している場合は、健診結果とあわせて医師や薬剤師に伝えてください。
薬による腎機能への負担を専門医に相談することが、健康を守る第一歩となります。
腎臓に影響しやすい薬を飲んでいる場合は、健診結果と一緒に医師や薬剤師へ伝えてください。市販薬やサプリも含め、薬の名前と飲む頻度が分かると相談がスムーズです。
腎機能の再検査を受けるタイミングと受診科

数値に異常が見られた場合、どのタイミングで何科を受診すれば良いのか、具体的な基準を解説します。
腎臓内科の紹介基準
一般的に、40歳未満でeGFRが60未満、40歳以上で45未満の場合は、腎臓内科への相談が検討されます。結果表の判定区分や所見欄も合わせて確認してください。
また、eGFRの数値にかかわらず、尿蛋白が「1+」以上出ている場合は、再検査で確認する項目が増えることがあります。一度の検査結果だけで判断せず、結果表の指示に沿って再検査の予定を立て、過去の推移もあわせて確認します。
尿蛋白が陽性(1+以上)なら、結果表を持って早めに医療機関で相談すると、再検査で何を確認するかが決めやすいです。
- eGFRが45未満(40歳以上の場合)
- 尿蛋白が陽性(1+以上)である
- 血尿と蛋白尿の両方が認められる
ふたり主治医制
最近では、近所の「かかりつけ医」と、大きな病院の「腎臓専門医」が連携して診察を行う体制が増えています。
普段の血圧管理や処方はかかりつけ医が行い、半年に一度などの定期的な精密検査を専門医が行うスタイルです。これにより、通院の負担を減らしつつ、専門的な知見に基づいた治療を継続することが可能になります。
地域の連携を活かして腎機能を継続管理することが、長期的な安心に繋がります。
シスタチンC検査
クレアチニン値が筋肉量の影響を受けやすいのに対し、シスタチンCという項目は筋肉量の影響をほとんど受けません。
再検査の際、このシスタチンCを測定することで、より純粋な腎機能の状態を把握できる場合があります。特に高齢者や体格の小さな方において、正確なeGFRを算出するために非常に有用な検査です。
シスタチンCを測定して真の腎機能を評価することで、誤診や見逃しを防ぐことができます。
将来のリスク予測
近年の医療現場では、過去の健診データや現在の数値をAIで解析し、将来の透析リスクなどを予測する取り組みが始まっています。
今の数値だけでなく、「このままだと5年後にどうなっているか」という予測を知ることで、より主体的に対策に取り組めます。単なる点での評価ではなく、経年的な変化の「線」で捉えることが重要です。
データの推移から将来の腎機能を予測して備える視点を持ちましょう。
再検査の費用
医療機関で腎機能の再検査を受ける際の費用は、検査項目や医療機関によって変わります。事前に受付で「検査費用の目安」を確認しておくと予定が立てやすいです。
血液検査や尿検査、必要に応じて超音波(エコー)検査などが行われます。健康診断の結果を持参することで、重複する検査を省き、スムーズに診療が進むことが多いでしょう。
健診結果を持参して効率的に再検査を受けることをおすすめします。
eGFR低下を抑えるための具体的な食事療法
腎臓の機能が低下している場合、食事の内容を見直すことが勧められることがあります。数値や体調によって調整点が変わるため、結果表の指示も確認しながら進めてください。
塩分6g未満
腎臓への負担を考えると、「減塩」は見直しやすい項目です。塩分量の目安は人によって変わるため、健診結果や血圧の状況を見ながら、医療機関で確認してください。
塩分を摂りすぎると血圧が上がり、腎臓の細い血管に強い圧力がかかってダメージを与えてしまいます。出汁を効かせたり、酸味や香辛料を上手に活用したりして、無理なく塩分を減らす工夫をしましょう。
減塩は血圧やむくみの出方にも関わるため、まず調味料や汁物の量から見直すと続けやすいです。
タンパク質制限
タンパク質は体に必要な栄養素ですが、過剰に摂取すると分解される際に腎臓へ負担をかける老廃物が出ます。
ただし、自己判断での極端な制限は栄養失調や筋肉量の低下を招き、逆効果になることもあります。医師や管理栄養士の指導のもと、自分のステージに適したタンパク質量を守ることが大切です。
適切なタンパク質量を医師と相談して決めることが、安全な食事療法の鍵です。
カリウム管理
腎機能がかなり低下してくると、カリウムがうまく排出されず、血液中に溜まってしまうことがあります。
高カリウム血症になると不整脈などの危険があるため、野菜を茹でこぼしたり、果物の摂取量を控えたりする工夫が必要になる場合があります。ただし、初期の段階では必ずしも制限が必要ではないため、検査数値を確認しながら調整しましょう。
血液中のカリウム濃度を確認し調整を行う必要があります。
水分補給
適切な水分補給は、腎臓の血流量を保ち、老廃物の排出を助ける役割があります。
水分のとり方は体調や持病によって変わります。心不全や腎機能の状態によっては制限が必要なこともあるため、「普段の飲み方」と「むくみの有無」も含めて医師に伝えて確認してください。
1日の適切な水分摂取量を把握して実践することが望ましいでしょう。
食事療法のコツ
腎機能を守るための生活習慣の改善ポイント
食事以外にも、日々の生活習慣を見直すことで腎臓の健康を長く保つことができます。
血圧管理
腎臓は毛細血管の塊であるため、高血圧は腎臓にとって最大の敵と言っても過言ではありません。
家庭血圧を測って記録し、健診結果とあわせて傾向を見ます。目標とする血圧は年齢や合併症で変わるため、結果表と家庭血圧の記録を持って医療機関で確認してください。
日々の家庭血圧を記録して血管への負担を防ぐことが、腎臓を守る最強の対策です。
血糖値管理
糖尿病は、日本において人工透析が必要になる原因の第1位となっています。
高血糖の状態が続くと、腎臓のフィルター(糸球体)がボロボロになり、濾過機能が失われてしまいます。健康診断で血糖値やHbA1cの異常を指摘されている方は、腎機能を守るためにも徹底した血糖コントロールが必要です。
血糖値を正常範囲に保ち糖尿病腎症を防ぐことが、将来の健康に直結します。
禁煙する
タバコを吸うと血管が収縮し、腎臓への血流が悪くなるだけでなく、動脈硬化を促進させます。
研究データでも、喫煙者は非喫煙者に比べて腎機能の低下速度が速いことが報告されています。腎臓への悪影響を最小限にするためには、まず禁煙を決意することが重要です。
禁煙によって腎臓への血流をスムーズに保つことが、機能維持には不可欠です。
有酸素運動をする
適度な運動は、血圧や血糖値の改善に役立ち、間接的に腎臓を守ることにつながります。
以前は腎臓が悪いと安静が推奨されていましたが、現在は無理のない範囲での運動が推奨されています。1日30分程度のウォーキングなど、息が切れない程度の有酸素運動を週に数回行いましょう。
無理のない範囲で有酸素運動を継続することで、全身の血流が改善されます。
早期に腎機能対策を始める5つのメリット
腎機能の低下に早く気づき、対策を始めることには多くのベネフィットがあります。
腎機能管理における3つのデメリット
一方で、対策を続ける中での苦労や、意識しておくべき点も存在します。
eGFRが低いと言われたら|腎機能の見方と再検査健康診断クレアチニンに関するQ&A
最後によくある疑問を解消しておきましょう。
まとめ:腎機能を守るために再検査と生活改善を始めよう
健康診断の結果を正しく理解し、適切な行動をとることは、将来の健康を守るために不可欠です。今回の重要なポイントを以下に整理します。
- eGFRは腎臓が老廃物を濾過する能力を示す指標であり、数値が低いほど機能低下を意味します
- クレアチニン値はeGFR算出の根拠となる老廃物ですが、筋肉量によっても数値が変動します
- eGFRが60未満の状態が3か月以上続く場合は、慢性腎臓病(CKD)が疑われます
- 加齢に伴い腎機能は低下しやすいため、塩分制限や血圧管理による負担軽減が重要です
健康診断で「要再検査」や「要精密検査」と書かれている場合は、結果表をしまい込まずに、判定区分と所見欄を見直してください。過去の結果があれば一緒に用意し、医療機関で「再検査で何を確認するか」「どの診療科が相談先か」を確認します。
参考文献・出典
- 日本人間ドック・予防医療学会|判定区分表等に関するQ&A|2024年
- 国立がん研究センター がん情報サービス|がん検診について|2026年

